スリングボウ用矢の試作 The trial production of a Arrow for SlingBow

スリングショットを利用し、
鉄製の弾ではなく矢を放つことができる


SlingBow(スリングボウ)


というものがあることを知ってから、
どうしても、自分で体験してみたくなってしまった。


最初は、アーチェリーと同じ矢を使っていたが、
不満点が見つかり、それらを改善したスリングボウ専用矢を試作することにした。



数回の実射を通して判明したことは、主に3点。


1.矢の長さは、フルドロー(ゴムを引ききった状態)でもレスト(矢をセットする台)から落ちないようにするため、
腕の長さや、ゴムの強さにもよるが、70センチ以上は必要。


2.アーチェリーでは弦と矢の接続部分となる、「ノック」の部分は、
ゴムを引き絞った状態でも安定して保持できるよう、
矢の直径より少し大きめの物を使う必要あり。


3.羽根の場所は、ノック付近ではゴムの弾受け部分に干渉するので、
矢の先端側、干渉しない位置に移動。


アーチェリー用の矢をスリングボウで使う場合、
主に、この3点が構えた時の安定性や命中精度に影響し、不満を持った。


そして、これらの不満点に対応した矢を製作した結果、
完成したものは、「スリングボウ専用矢」
になってしまった。
材料の殆どはアーチェリー用の材料を使用した為、
外見はアーチェリー用の矢に似ているが、
ノック部分の違いから互換性は全く無く、
スリングボウ専用構成となっている。


シャフトはアーチェリー用アルミシャフト
「EASTON XX75 PLATINAM PLUS」を使用。
コスト面と、ねじ込み式のポイントを利用する為のインサートが使えることが選定理由。
落ち着いた色調も好み。


通常、このグレードのアルミ矢では、画像下の一体整形のポイントを利用するが、
今回は画像上のシャフトに入れるインサート部分と、
ポイント部分が別体式の物を使用。



べインは鳥羽根4インチ 100mmを利用。
ゴム羽根より、柔軟で適度な弾力もあり、レストの形状に左右されにくい。
羽根の一部がレストのどこかに干渉した場合でも、ゴム羽根に比べ、スムーズに矢が飛んでいく。


指定した角度に矢羽根を取り付ける器械、「フレッチャー」を使用し、
矢の後端より4cmの位置に取り付け。


最初フレッチャーにはシャフトをセットしておき、後からクリップにセットした鳥羽根に、
専用の接着剤「flexbond」を適量付けて、フレッチャーにセットする。


接着剤がある程度乾くまではセットしたままにしておくこと。
取り外すのが早すぎると、鳥羽根のゆがみの力で、羽根が曲がっていく。


画像では、べインの取り付け角度を出す為に通常のノックが付いているが、
べイン接着後は取り外し、スリングボウ用のノックに交換する。


事前にシャフトの羽根取り付け部分を紙やすりで荒らし下地処理を行い、
その後、羽根側の接着面とシャフト部分をアルコールで脱脂する。
そのまま取り付けた場合より、耐久性の向上が望める。

また、接着後に羽根の前端と後端に一滴づつ、接着剤を垂らし、
「接着剤溜り」を作るようにすると、
羽根の取れ始めの場所が補強され、さらに取れにくくなる。




羽根の接着後、インサートをシャフトにセットする。
(写真右)
そのまま差し込むだけでも、固定はできるが、
的から引き抜く時に抜けてしまわない様に、
ゼリー状の瞬間接着剤を利用する。


スリングショットを十分に使いこなせていないせいもあり、
的から矢が外れる場面も時々ある。
そのような場合でも自身や他人が怪我をしたり、
事故につながらない環境で練習することは当然なのだが、
矢は無事で済まないこともある。


特に、地面やコンクリートの壁に矢が当たった場合などは、
先端部分の消耗が激しい。
一体型に比べ、コストは若干高くなるが、
この部品は消耗部分なので交換式としてみた。